09月17日にシングル'Driver', 'Nothing For Free'をリリースしたPendulumは新たに公開されたインタビューで今後のリリース計画と今回のシングルリリースまでの経緯を明かしました。
Rolling Stone Australiaに掲載されたRob SwireとGareth McGrillenのインタビューによればPendulumは現在Hybrid Mindsとのコラボレーション楽曲のリリースに向けて作業中であり、更にそのリリース時にはもう1曲併せてリリースされるということです。
Pendulum Swing Back Into Focus
“There’s more coming. There’s a collab we’ve done with Hybrid Minds that we’re putting the finishing touches on now; there’s another track to go along with that,” Swire explains.
(「まだまだリリースは続くよ。 今はHybrid Mindsとのコラボレーション曲の最後の仕上げを行っている。それに合わせた別の曲もある」とSwireは説明します。」)
ここで言及されているHybrid Mindsとのコラボレーションとは今年初めのオーストラリア / ニュージーランドツアーで披露されたLiquid Drum 'n' Bassトラックのことを示していると推察されます。
PendulumがTrinityツアーで未リリースの新曲を披露
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更に、次回のリリースが今回と同じく2曲同時に行われることについては理由を以下のように説明しています。
“We’re sort of going to do it in collections of two tracks at a time. The reason for that is partly because there’s a lot less pressure than putting an entire album together and putting it out there, and partly because I don’t think people listen to fucking albums anymore.”
(「我々は、一度に2つのトラックのコレクションをリリースするつもりだ。その理由の1つは、アルバム全体にまとめて発表するよりもはるかにプレッシャーが少ないこと、そしてもう1つは、人々が既にアルバムというフォーマットを聴いていないと思うからだ。」)
長い中断期間と紆余曲折を経てのリリースとなった今回のシングルですが、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行を経験して当初の予定を大きく変更せざるを得なかったことも語っています。
“It was supposed to happen in March,” Swire explains of their return. “We had signed to a label services company called The Orchard – it’s not really like a label, but it’s more label services – and we sort of had it all ready to go, and then all of a sudden, everyone at the office is at home, our manager’s at home, and stuff is a nightmare.
(「それは3月に起こることになっていた」とSwireは彼らのリターンについて説明します。「我々はThe Orchardというレーベルサービス会社と契約した。 ― これは、実際にはレーベルのようなものではないが、よりレーベルサービスだ。 ― 準備は整っていたが、突然オフィスの全員が家に居て、我々のマネージャーも家に居る、悪夢だよ。)“We had plans to have a music video out, and all that sort of stuff just came to a screeching halt. So it was meant for March/April, but everything just sort of [went downhill].”
(「ミュージックビデオをリリースする計画があったが、全て急遽中止になった。つまり、3月 / 4月の予定だったが、全てがが上手く行かなくなったんだ。」)
また、活動の再開に至るまでにはきっかけや環境の変化など複合的な要素が関係したということです。
“It was so refreshing, because you know how you sometimes retrospectively think back on something and sometimes in a negative light?” McGrillen asks. “I think at the point we put everything on hold, everything that came with Pendulum was just feeling a bit negative.
(「時々何かを振り返って否定的な見方をしたりすることってあるだろう?、だからそれはとても新鮮だった。」McGrillen は尋ねます。「全てを保留にした時点で、Pendulumに付随する全ての物は少し否定的になっていたと思う。」)“Then when we did this live stuff again, we just had so much fun doing it. I think that re-sparked everything.”
(「ライブをもう一度やったとき、とても楽しかったよ。それが全てを刺激したと思う。」)“The promoter of Ultra Festival, Adam [Russakoff], he’s one of our friends,” Swire recalls after some prompting from McGrillen. “He came into the car before a Knife Party show in Miami and said, [Swire adopts an American accent] ‘Right, what is it going to take you motherfuckers to bring Pendulum to Miami?’
(「Ultra FestivalのプロモーターであるAdam(Russakoff)は我々の友人の1人だ」とSwireはMcGrillenからのいくつかのプロンプトの後に思い出します。 「彼はマイアミでのKnife Partyショーの前に車に乗り込んで言った、[Swireはアメリカ人のアクセントで]「なぁ、Pendulumをマイアミに連れて行くのに何が必要だ?」)“I initially don’t want to do it, so I say the first thing that comes to my head; just talking it up as something that he’d never do. So I say, ‘Alright, how about this? Knife Party headlining the main stage, and Pendulum, together at once, and then Pendulum will do it.’ And he’s like, ‘Done!’ I’m like, ‘Fuck! This is happening.'”
(「最初はやりたくないと思っていたから、頭に浮かんだことを言うんだ; 彼が絶対にやらないこととしてね。『よし、これはどうだ?Knife Partyがメインステージのヘッドライナーを務め、それでPendulumも一緒になって、Pendulumがやる』。そしたら、彼は『いいよ!』と言った。私は『クソッ!これは現実なのか』という感じだった。)Ultimately, Pendulum’s return was a welcome one, though it took until 2017 for the group to formally announce their comeback. As Swire admits, the decision to fully reactivate as an outfit wasn’t one that was made lightly, and one that was predominantly reliant on needing to feel an absence within the scene that only they could fill.
(結局のところ、Pendulumの復帰は歓迎すべきものでしたが、グループが正式に活動再開を発表するまでには2017年まで掛かりました。Swireが認めているように、アウトフィットとして完全に再開するという決断は軽々しく行われたものではなく、彼らにしか埋められないシーンの中での不在を感じる必要があったからこそ出来たことだったのです。)“I think it was that we missed playing live,” he states, casting his mind back to the band’s initial era. “I think it’s hard to remember now, especially for new people getting into drum and bass – even though drum and bass is still alive and healthy – I found that some of the younger people getting into it, they have this idea like, ‘Pendulum! They were the kings of drum and bass! Yeah!’
(「ライブでプレイでするのが恋しかったんだと思う」と彼はバンドの最初の時代に思いを馳せました。「特にDrum 'n' Bassに触れたばかりの新しい人々にとって、今となっては思い出すのが難しいと思うが ― Drum 'n' Bassはまだ健在で健全だが ― 若い人達の中にはにはこのような考えを持っている人が居ることが分かった。彼らはこんな感じだ「Pendulum!彼らはDrum 'n' Bassの王様だった!Yeah!」)“It’s like, ‘No, no, no, no, no…’ They’ve sort of misunderstood what the relationship was like with the scene initially. We weren’t the darlings of drum and bass. We were not seen in a positive light, generally, by the scene. There was always this kind of love/hate thing with the scene, and I guess as we stopped feeling that, and felt the absence, it felt like we could come back.
(「それは『いや、いや、いや、いや、いや…』という感じだ。彼らは、Pendulumとシーンとの関係が最初どのようなものであったかを誤解していた。我々はDrum 'n' Bassの寵児ではなかった。我々は一般的にシーンからポジティブに見られていなかった。シーンにはいつも愛憎があって、それを感じなくなって、欠乏を感じるようになると、戻ってこれるような気がしたんだ。」)
ここで触れられている愛憎とは00年代のDrum 'n' Bassシーンを知るファンにはよく知られた話で、「Drum 'n' BassシーンにはPendulumを非常に強く嫌う人々が一定数存在する」という現実があるということです。
PendulumはVaultで彗星の如く現れると直ぐにシーンのBreakbeat Kaosと契約、DJ Setのブッキングも殺到するようになりAnother Planetというヒットシングルを生み出すなどリリースも好調を維持します。そしてアルバム'Hold Your Colour'でアンダーグラウンドでの成功を絶対的なものとしました。
しかしその後Band Setを始めると楽曲の方向性も変化します。Breakbeat Kaosを離れてから最初のシングル'Granite'のリリースはその後のPendulumの方向性を決定付け、"Sell outした"と判断されると同業のプロデューサー達から批判を受け、当時のDrum 'n' Bassシーンの主要なオンラインコミュニティであったDogs On AcidでもPendulumを嫌う人々から強く糾弾されるようになりました。
Rob Swire自身Pendulumとしての活動開始直後からDogs On Acidにアカウントを保有しファンとの交流や後進のプロデューサー支援などを続けていましたが、こうした否定的な投稿が執拗に繰り返されるようになると、2007年12月にシーンへの絶縁宣言とも言える投稿を残しそれ以降Dogs On Acidには投稿を行っていないという過去があります。
ok...time to clear things up / sign-off | DOA | Drum & Bass Forum
新しい世代のDrum 'n' Bassファンにはこうした当時の実態が知られておらず、音楽の印象のみで当時のシーンを想像している、或いはVaultの衝撃からメジャーレーベルでの経済的成功というポジティブな面のみが物語として伝わっていることが推察され、猛批判に晒されシーンと決別した過去もある2人にとっては戸惑いもあるということでしょう。
Rolling Stone Australiaと同じくRob SwireとGareth McGrillenが答えているNME.COMに掲載されたインタビューではリリース直後に公開されたミュージックビデオの撮影秘話を明かしています。
Pendulum drop two new songs and tell us about returning after a decade | NME
What was it like making a video in these dark, COVID times?
(COVID時代、暗い社会の中でビデオを作るとはどのような様子でしたか?)Rob: “Making it in a pandemic was surreal. I hadn’t really been out of my house in four months and hadn’t seen anyone apart from my girlfriend and maybe the odd Deliveroo guy. It was fairly unnerving to be in a room with 20 people after all that time, but my startledness kind of works in the video. It wasn’t intentional. They were saying, ‘Just go with the flow man, feel the vibe’. I said, ‘I have been at home for four fucking months during a pandemic, there is no vibe!’ It kind of worked out.”
(「パンデミックの中でそれを作ることはシュールだったよ。4ヶ月も家を出ていなかったから、ガールフレンドやDeliveroo [※訳注: イギリスで設立されヨーロッパ諸国を中心に展開しているオンラインフードデリバリーサービス] の男以外は誰も見なかった。その期間の後で20人くらいの部屋にいるのはかなりナーバスだった、私の驚きはビデオにも表れているよ。意図的なものではなかったけどね。彼らは「流れに身を任せて、vibeを感じるんだ」と言っていた。私は言った、「パンデミックの最中に4か月間家にいたんだ、vibeは無い!」。それは上手くいったよ。」)
新型コロナウイルスの流行によってツアーの再開時期が見通せない状況ですが、同インタビューでは既にBand Setでの活動計画が存在することも認めています。
Do you have any other plans to blow up your live show when you hit the road again?
(あなたが再びツアーに出たときにライブショーを爆破する計画はありますか?)Rob: “Ideally, it won’t be social distancing. That’s fucking lame. We’ve got a bunch of ideas to bring a live band back after the pandemic so that we can do it properly.”
(「理想的なことを言えば、ソーシャルディスタンシングではないことだ。ソーシャルディスタンシングによるライブショーは最低だ。パンデミックの後でライブバンドに戻り、適切なことをするアイデアが大量にある。」)